伏 贋作・里見八犬伝

伏 贋作・里見八犬伝

伏 贋作・里見八犬伝

娘で猟師の浜路は江戸に跋扈する人と犬の子孫「伏」を狩りに兄の元へやってきた。里見の家に端を発した長きに亘る因果の輪が今開く。

正月に読むつもりが後回しになった上に頭が読書モードに入らず読み始めてもなかなか
先に進めなかった。ということでやっと本年2冊目の読書。
馬琴の原典は読んだことないものの抄訳版の里見八犬伝は何バージョンか読んでたので
この本のアレンジは興味深かった。もともとが勧善懲悪な話だったものを善悪がカオス
になったまた別の世界観に仕上げていてグロテスクで幻想的な文章が美しい。
作中作や語りの部分を挿入することによって大きなストーリーをコンパクトに読ませる
あたりが実に上手い。この多重構造によって作品にアングラな雰囲気が漂っているのが
また不思議な味わいだ。で、完全にこっちの気分の問題だけどちびちび読んでしまった
ので作品世界に没頭できなかったのが残念だったなー。犬人間の悲哀の部分などもっと
感情移入できたと思うんだが。入れ子構造の外枠は追いつ追われつの活劇なんだが少し
ボリューム不足な感じがした。あとカバーや文中のイラストが作品の陰性なムードと
合っていてなかなかに良かった。

現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)

現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)

現代語訳 南総里見八犬伝 下 (河出文庫)

現代語訳 南総里見八犬伝 下 (河出文庫)