北国の帝王

1933年、アメリカ大不況のさなか、列車に無賃乗車しながら移動する浮浪者“ホーボー”たちの存在を、オレゴン州ウィラメット・バレーを通過する19号車の鬼車掌シャックは決して許さず、非常な鉄槌を下し続けている。しかし、Aナンバー・ワンだけは常に彼の裏をかいては19号車に乗り込み、周りから“北国の帝王”と崇められていた。そんなある日、彼の王座を狙おうと、若いホーボーのシガレットが行動を共にするようになるが……。
骨太映画の巨匠、ロバート・アルドリッチ監督がリー・マーヴィンアーネスト・ボーグナインの2大オスカー俳優共演で手掛けたアクション。無賃乗車を許さない列車の鬼車掌と、無賃乗車の帝王が激突する。

アーネスト・ボーグナインの顔芸が凄い。いやボーグナインはもともとあんな顔なので
顔芸というのも違うか。とにかく殺気だったブルドッグのような顔で怒鳴り散らす
ボーグナインだけで映画を見ている醍醐味がある。にしても何故にそこまで無賃乗車が
許せないのか、何故にそこまで無賃乗車がしたいのか、背景と理由はちゃんとあるに
しても意地の張り合いがエスカレートして手段と目的が入れ替わっていくのが論理的に
間違っているとは思うが男心がくすぐられる。最終的には全力疾走する列車上で
ぶっとい鎖だの角材だの斧だの血みどろの戦いになるが不思議と殺伐とはしない。
ガチな殺し合いまでしているのに妙なスポーツマンシップがあるし、両雄の形相は
凄まじくってもどこか楽しそうだ。一度列車から落ちかけた車掌を引き上げてさらに
戦おうとするリー・マーヴィンも変だと思うが男として理解出来てしまう。
背負っているものを捨てて意地だけでの一騎討ちはダサいけど、かっこいいぞ!
最後にマーヴィンが若造まで列車から放り出すのも気持ちがいい。
年取っておっさんになってくのも悪くない気分になれる男気溢れるいい映画だった。
自分が血みどろバトルするのはごめんだが。